どうもエイトシーです。
久しぶりに今回はリアルロボットの金字塔にして私の大好きな作品「パトレイバー」の作品についてのお話です。
今回は、「機動警察パトレイバー2 the movie」を見た話です。
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・あらすじ
前作「機動警察パトレイバー the movie」の事件から三年後、かつての特車二課第2小隊は後藤、山崎を除いて散り散りに異動し、それぞれで生活を送っていた。ある日、警部に昇進した南雲しのぶが会議を終え帰宅する中、突如横浜ベイブリッジで爆破事件が起こってしまう。当初は爆弾かと思われたが、この爆破は戦闘機から放たれた一発のミサイルによるものだった。情報が錯綜する中、南雲と後藤の前に陸幕調査部別室の「荒川」が現れ……
・脇役になった”特車2課”
まず、今作は「パトレイバー」と題されていますが、「AV-98イングラム」は完璧に脇役です。それどころか、あらすじで説明した通り、本作の主人公はあくまで「南雲しのぶ」、あるいは「後藤隊長」であり、「特車二課」のメンバーに関してもほとんど出番がありません。正直、この映画に適切にタイトルを付けるとするなら、「機動警察パトレイバー Another Story 〜南雲しのぶの憂鬱〜」とでもするべきでしょう。なので、旧OVA版や劇場版一作目のように、難解で歯応えのある物語と明るく元気な特車二課のコントラストが見たい人々には、少し物足りなさを感じるかもしれません。
…じゃあ駄作なの?
……とんでもない!
確かに特車二課の面々はほとんど脇役になってしまいましたが、その分彼らはいい存在感を残していきました。
…ズバリ、彼らは”成長”していました。
無鉄砲で捻くれ者だった遊馬は大人しく聡明な印象になり、元気いっぱいのメカ少女だった野明は、すっかりクールで大人な女性になっている。ほんの少しの登場シーン……いや、むしろ少しの登場シーンだからこそ、彼らの”印象違いな登場シーン”は時間の経過を生々しく感じることができ、どこか寂しく、どこか誇らしいような複雑な感情が想起されます。
「いつまでもレイバーが好きなだけの女の子でいたくない」………そんな寂しいこと言わないでくれよぉ…
・さらに濃い「押井守」
前作の記事の中で「今作になって押井守が牙を剥いてきた」みたいなことを書いていました。
じゃあ今回はどうなのか……もちろん、前作よりも濃厚に「押井守」しています。特に、ストーリーの難解さにそれが如実に表れていると感じました。
前作では、「一人の狂気の科学者によって引き起こされた事件」という内容でストーリーが展開するため、旧OVA版と比較すると幾分シリアスにはなりましたが、それでもストーリーの本質部分は意外とシンプルでわかりやすいものでした。
対して今作、同じように「一人のテロリストによって引き起こされた事件」ではあるのですが、前作よりも政治的な駆け引きの描写が多く、政府、警察、自衛隊、テロリスト、南雲さんなどのさまざまな視点から事件を読み解かなければならないので、前作よりも格段に難解になっています。
また、映像表現も素晴らしく、写実的な東京湾を船で渡るシーンや、雪の降る都心を描いたシーンなど、シンプルながら印象に残る素晴らしい映像を見ることができます。
・「東京」と「戦争」
そして、今作で一番特徴的なのが、私たちにとって日常的、現代的な「東京」の風景と、戦車や自衛隊員など、非日常的な「戦争」の風景が同時に存在する異質な空間を見事に描いている点です。閑散とした、それだけで異常を際立たせるような東京の風景を、重苦しい装備に身を包んだ自衛隊員と、圧倒的な質量、重量を感じさせる戦車が行き交う……それでいて、その自衛官は決して冷血な存在ではなく、子供に手を振ってあげたり、あくまでも生きた人間であるという生々しさ……もはや私たちにはファンタジーと言えるほど昔の話になってしまった「東京と戦争」をとても写実的に描いています。それでいて、その風景を雪とともに美しく描いているので、とてもアンバランスで不安定な心情になる不思議なシーンになっています。
というわけで今回は、「機動警察パトレイバー2 the movie」を見た話でした。
この映画結構言語化して魅力を語るのが難しく、結構長々時間をかけてやっと記事が書き終わりました……長かった……
もはやただの「巨大ロボットアニメ」では収まらなくなっている本作、是非是非その素晴らしいアニメ表現を見てみてください。
……さて、次回は”問題作”でお会いしましょう……