どうもエイトシーです。
私は映画が大好きです。その中でも特に、SF映画が大好きです。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようにわかりやすさ、面白さを重視した映画もあれば、「ブレードランナー」のように世界観を重視した作品、「2001年宇宙の旅」のような哲学的な作品などなど…SF映画という1ジャンルの中にも数多く楽しみ方があります。
……というわけで、今回はこれらと比べるとかなり一風変わったSF映画………いや、正直この映画をSF映画と呼ぶべきなのか?……いや、そもそもこの作品は映画なのか?………ちょっと悩ましいのですが、とにかく紹介です。
今回は、映画「最後にして最初の人類」の紹介です。
・あらすじ
本作は、オラフ・スティープルトンによるSF小説「最後にして最初の人類」を、映画音楽などで幅広く活動し、2018年に亡くなってしまった音楽家ヨハン・ヨハンソンが監督。そしてナレーションに、人間よりは天使とかに近いでお馴染みのティルダ・スウィントン氏を起用した映像作品です。
ストーリーは、我々人類の20億年後の遠い遠い子孫…もはや形すら大きく変わり、地球を捨て海王星に移住してしまった人類が、いよいよ自分達の滅亡が近いことを悟り、私達第一世代の人類にコンタクトをとる……という内容の作品になっています……結構生き延びたね人類……
原作は映画「2001年宇宙の旅」にも影響を与えたと言われる作品で、ストーリーだけ見ればまぁシンプルなようにも見えますが……しかしてこの映画はかーなり不思議な構造になっています。
・映画?
この映画、シンプルに↑のストーリーを映像化し、ストーリー仕立てにするような映画的表現をしていません。この映画は、
・モノクロ映像で描かれる旧ユーゴズラビアのスポメニック(戦争記念碑)と不気味に光るオシロスコープ
・弦楽器を中心とした壮大なBGM
・ティルダ・スウィントンのやさし〜いナレーション
の三要素だけで構成されており、ド派手なアクション映像やCGを用いた精細なグラフィック、脳を刺激されるような綿密なストーリーではなく、どちらかといえば不思議映像&デカデカBGM付きオーディオブックという感じになります。
…正直、本当に「SF映画」を期待してみると期待外れな映画になってしまうかもしれません。正直私もちょっと寝そうになりました。
…じゃあ駄作なのか!?……とんでもない!!
私は別に原作のファンでも監督のファンでも何でもないただの映画好きなので、その方面での楽しみ方はどうにもできませんでしたが、私はSF映画として本作を結構楽しめました。
というわけで、「SF映画として」の本作の魅力を書いてみたいと思います。
・SF映画としての本作の楽しみ方
あらすじで書いたように、本作は、我々人類の遠い遠い、気が遠くなるほど遠い子孫からのメッセージとして出来上がっており、ナレーション自体も始終その生命体の一人称視点で進行していきます。
……つまり、この映画は、遠い遠い未来の生命体から、現代でこの映画を鑑賞している第一世代人類の「あなた」に向けたビデオレターになるのです。こうなると、この映画はただのオーディオブックじゃなく、観客である私達も巻き込んだ一種のアトラクションとして楽しむことができます。
このような解釈で映画を見ると、全く関連なく映し出されていたように見える遺跡も、それこそ何億年後の人類である彼らの姿を映し出した、彼らの住む海王星にある遺跡や研究施設の跡地のように見えてきます。
作中で彼らは、「自分達は基本的なコミュニケーションにテレパシーを使っている」という発言をしていたので……もしかしたら、言語そのものが大きく失われてしまい、文字のみの手紙や音声だけではなく、ビデオレターとして自分達の状況を送ってきてくれたのかな?……なんてこじつけをしながら見るとなかなか楽しめます。
BGMもとても素晴らしく、静かーに入りながら徐々に徐々に盛り上がっていき、と思ったらある時ぴたりと止まってまた静かに静かに入っていく。明確に何らかの感情を煽るのではなく、ただ漠然と壮大な終焉が迫っていることを感じさせるような素晴らしい音楽です。
という訳で今回は、「最後にして最初の人類」を観た話でした。
……何というか、この映画の魅力は正直文章ではなかなか伝えづらい部分があります。というか、オーディオブック寄りの本作は一般的な映画として見始めると期待はずれになってしまうでしょう。
……今まさに本作をお勧めする文章を書いている身としてはなかなかもどかしいのですが、正直本作の魅力は見ないことにはなかなか感じずらいです。なのでぜひ、遠い遠い未来から送られてきたこのビデオレターを開封し、モノリスに触っちゃった気分に浸りながら、いつ滅亡するともしれない私達第一世代人類ではなく、その先の遠い遠い20億年後の子孫に思いを馳せてみるのも面白いのではないでしょうか?