エイトシーのオタク語り

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行きどころの無いオタクの独り言

”ゴーディ”は結局何だったの? 映画「NOPE」のテーマを解説する話

 


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 どうもエイトシーです。

 

 先日「NOPE」という映画についてお話ししました。めちゃいい映画なのですが映画そのものをお勧めする話はこちらを読んでもらうとして……

 

 

eight-c.hatenablog.com

 

 さて本作、基本的にはスカッと爽快なホラー寄り作品として出来上がっており、ストーリーもぼちぼちわかりやすいのですが、物語本編に関わらない、ちょっとノイズっぽくなっちゃってる部分があります。それが、チンパンジー「ゴーディ」に関わる事件の部分です。

 

 

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 結構序盤からセンセーショナルに描かれる割には本筋のUFO騒動とは全然関係がなく、映画を見ながら肩透かしを食らったのはきっと私だけじゃないはずです。

 

 しかし、人類の叡智インターネットはちゃんとその答えを知っていました。そして、この「ゴーディ事件」は、実はこの映画の根底に隠された”テーマ”と深い関係があったのです。

 

 というわけで今回は、映画「NOPE」のテーマを解説するお話しです。

 

 

 

 ちなみに、全力ネタバレ有りの記事になるので、まだ観てない人は、まず一旦アマプラで本作を視聴してからもう一回戻ってきてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・まず結論から……

 

 すでに散々もったいぶったので結論から先に書きましょう。

 

 

 ズバリ、映画「NOPE」のテーマとは、「差別」と「搾取構造」です。

 

 

 この映画、結構説教臭さを抜いているので↑みたいなことを言われてもいまいちピンとこないかもしれません。なので、具体例を上げながら見ていきましょう。

 

 

 まずそもそも、主人公のエメラルドとOJは、映画撮影用の馬を調教し、貸し出すことで牧場の生計を立てていました。つまり、彼ら二人は、本来野生で生活するべき動物を「搾取」して利益を得ているということができます。

 

 そして二人は、自分たちヘイウッド家のご先祖様、世界最初の映画である「動く馬」という映像でジョッキーをした最初の映画スターの話をします。そして彼は、「黒人」というアイデンテティ故に、「搾取」されたまま、後世に名を残さぬままとなってしまいました。

 

 ……などなど、本作では結構この「差別」と「搾取」の構造が結構何度も何度も出てきます。そして、実は件の「ゴーディ事件」についても、この構造を当てはめることで完璧に説明がつきます。

 

 

・「ゴーディ事件」の真相と無傷の生存者

 

 さてさて、本題の「ゴーディ事件」の話をしましょう。

 

 もうすでにお気づきの通り、この事件の裏にも「差別」と「搾取」がわかりやすく潜んでいます。この番組は、「シットコム」という枠組みの中で、チンパンジーであるゴーディを「笑い物」、「見せ物」にすることで笑いを取る、つまり、ゴーディを「差別」、「搾取」することで番組として成立していました。それに起こった結果としてなのか、ゴーディは暴走、出演者のほとんどを殴り殺し、最後は射殺されるという最後でした。

 

 しかし、この番組の出演者の中で唯一無傷で生き残った人がいます。それが、小役時代の「ジュープ」でした。ゴーディは他の出演者には怒りを込めて暴力を振るっていたのに、なぜジュープにだけは悲しそうにグータッチを差し出そうとしたのか?

 

 ジュープは、作中における唯一のアジア系の出演者でした。本編で彼の扱いがどのようなものだったのかは描かれていませんが、その他出演者が白人だったことを考えると、ジュープもゴーディと同じように、見せ物として「差別」、「搾取」されていた可能性があります。なんたってアジア人を表す差別用語には「イエローモンキー」なんて言葉もありますから……

 

 つまり、ゴーディにとってジュープは唯一自分と同じ境遇の存在だった。だから彼だけはゴーディに襲われなかったのです。

 

 ……と、ここまでならなんとなく悲劇ちっく美談ちっくにも見えますが、この後の「ジュープ」の結末はとても皮肉で悲惨なものになります……そしてここにも、「差別」と「搾取」が見えてくるのです……

 

 

・「ジュープ」の最後

 

 成長したジュープはその後妻と子供に恵まれ、テーマパークのオーナーになるなど、傍目には順風満帆なその後を送っているように見えます。しかし、テーマパークはどことなく寂れ出し、ジュープの承認欲求も次第に募っていきました。そんな時、その全ての問題を解決する手段が「やって来ました」……そう、UFOの出現です。ジュープは、自分のテーマパークの近所に出現したUFOをアトラクションとして利用しようと考えたのです。

 

 ……さて、本作は最後に判明するのですが、実はあのUFOはタコ的な生命体で、食事のために近所にたまたまいた馬(エメラルドとOJの牧場の馬)を食べたりしている"生き物"でした………そう、彼にそのつもりはなかったかもしれませんが、ジュープはあのUFOを「搾取」して利用しようとしてしまったのです。結果その行為がUFO君の逆鱗に触れたのかは定かじゃありませんが、ジュープは食べられるという結末になってしまいました。なんと因果で皮肉な結末……

 

 

 

 という訳で今回は、「NOPE」のテーマと「ゴーディ事件」の真相についてのお話でした。

 

 ……いやーーーーーー!!!、面白いッ!!

 

 今回話した部分は正味映画本編を楽しむためにはほぼ必要なく、こんな小難しい「テーマ」の部分が分からなくてもしっかり面白く作ってあります。……そこがマジですげぇ……ただメッセージを押し付けるだけじゃない、それでいてメッセージを読み解くとより深い楽しみ方ができる、マジで最高の映画です。一度見た人も、ぜひもう一度みてみてください。

 

 

 いよいよ真面目に監督の別作品も見てみたいな……

 

 

 

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