エイトシーのオタク語り

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行きどころの無いオタクの独り言

祝!!再上映 映画「花の詩女 ゴティックメード」の魅力を語る話


花の詩女 ゴティックメード ワールドガイド

 

 

 どうもエイトシーです。https://x.com/naganomamoru/status/1722561505382809704?s=20

 

 

 

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 先日、伝説のアニメ映画「花の詩女 ゴティックメード」の全国各所での再上映が決定しました。私は去年の再上映の際に近くの劇場で本作を視聴してきたのですが、本当に凄まじい映画だったので、今回を機にこの「壮大な御伽噺」について書いてみたいと思います。

 

・概要

 

 本作は、永野護氏によるアニメ映画で、氏が原作を手がける漫画「ファイブスター物語」と世界観を共有しています。ただ、一応本作だけを視聴しても楽しめるようにはなっています。そもそもファイブスターの主要な時代からは大きく昔の話になりますし…おまけに本作以降ファイブスターの設定が大きく変わりますし…

 

 

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 映像のほとんど全てを手書きのアニメーションで表現し、解像度は驚異の12K、容量にして1.5TBになり、現在では作者の意向もあって、配信はおろかDVD化もされておらず、劇場で再上映されるしか本作を視聴する手段がありません。そのため、本作の内容や魅力については、基本的には本作を見たものの口伝によって語り伝えられる…という、なんか本当に御伽噺めいた特殊な映像作品でもあります。

 

 声優には、逆シャアでクェスを演じ、また永野氏の奥さんでもある川村万梨阿氏や、同じく逆シャアでハサウェイを演じた佐々木望氏がいます。驚きの逆シャア率…

 

・シンプルなストーリーと深い世界観

 

 遠い遠い銀河系、星団歴という歴史の451年、小さな惑星カーマインの指導者であり預言者、「詩女(うため)」を引き継ぐことになった少女ベリン。彼女が詩女就任のため聖都へと向かおうとすると、突如遠い帝国である「ドナウ帝国」の皇子トリハロンが戦艦を率いて訪れる。彼は、ベリンの暗殺計画の護衛のため星団連邦から使わされたという…

 

 …と、ここまでのストーリーはかなりシンプルに見えますが…実際ストーリーの表面部分は驚くほどシンプルなボーイミーツガールです。正直、星団連邦の陰謀やら謎の組織やら、本編で描かれるややこしそうな部分は全体的に全く本編に関わりがなく、なんならベリンとトリハロンのラブストーリーにもならない、本当にただ「立場の違う男女が”出会う”」という、ただそれだけを真っ直ぐに描いたシンプルなストーリーになっています。どうしてもこの”裏側”の部分でストーリーを見たい人は本誌を読んでね…ってことかと…

 

 …と、ストーリー的には驚くほどシンプルなのですが、そのシンプルなストーリーが展開される世界観は、本作でしか味わえない独特なものになっています。とても牧歌的で穏やかな人々の生活と、地球と比べて明らかにオーバーテクノロジーが同居する、ラピュタナウシカとも似ているが、科学だけでなく魔法に近い概念も存在し、さらに、ベリンやトリハロンの口からは、自分たちよりもさらに昔に存在した幻の帝国の存在を示唆される…ファイブスターのいいところを見事に切り取ったうまい世界観の見せ方を、一本の映画という枠内でしっかり表現していると思います。

 

・衝撃の音響表現

 

 本作の衝撃は映像だけではなく、音響もとんでもないことになっています。本作に出てくるメカの音はどれも”大爆音”と呼ぶに相応しい音を轟かせており、主役であるロボットの起動には、実際のジェットエンジンの音を含んだ複数種類の機械音が組み合わさった、本作か、あるいは「ロケット発射音体験会」みたいな現場でしか体験できない類の爆音が鳴り響きます。この大爆音のおかげで、実際に目の前で”巨大ロボット”が動いている臨場感を味わうとともに、実際に「存在している」物体としてのリアルで複雑な音から、架空の装置であるロボットの現実感を感じることができると思います。まぁ耳栓はもしかしたら持ってた方がいいかもですが…

 

 特に、主人公機である「カイゼリン」の起動音は凄まじく、先の機械音と同時に女性の金切り声のような不気味な音を轟かせることで、美しくもどこか恐ろしく、不可思議でありつつもリアリティがある…そんな唯一無二の存在を確かに目の前で感じることができます。

 

・美しい映像で表現されるGTM

 

 そして、一番素晴らしいのは、GTMカイゼリンという存在そのものです。先に挙げた音響による効果もさることながら、その異形でありつつ美しい、女性、生物性を感じさせるフォルムでありながら、各部には確実に何かしかの理論に基づいて「機械的に」組まれている部品を感じることができる。装甲の色の変化によって明らかに人間のテクノロジーを超えたものであることもわかるが、目から射出されるレーザーセンサーや各部位の発熱や冷却から確かに現実的な実在感が感じられる。ファンタジーとSF的設定を見事に融合させた、まさに「ファイブスター」を象徴すると言っても過言ではない、本当に美しいロボットの”実在”を見ることができます。この映画公開から10年が経過しましたが、私はいまだにこのロボットを超える複雑な魅力を持つロボットを見たことがありません。このロボットを見るだけのために、映画という広い空間を用いるに値する、そんなとんでもない映画が本作であると言えます。

 

 

 というわけで今回は、「花の詩女 ゴティックメード」の魅力について語ってみました。

 

 …正直、ファイブスターをかなり履修できた現在、本当に語りたい「歴史」の部分があるのですが、そこはネタバレになるので次回に回したいと思います。

 

 歴史に残る伝説の御伽噺、アニメファンでも、そうでなくても十分に見る価値のある映画なので、可能な限りで見てほしい…というのが私の思いです。

 

 …残念ながら、私の近所では上映されないようなので、どうか、私の分まで楽しんできてくださいッ…

 

 

 

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「ゴジラ-1.0(マイナスワン)観てきたので「シン・ゴジラ」を見直した話

 

 どうもエイトシーです。

 

 

 この前話題沸騰中の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を観てきました。その辺の感想はこの辺を読んでもらって…

 

 

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 そんなわけで、結構いい映画だったわけですが、ここで改めてシン・ゴジラってどんなだっけ?」と思い、見直してきましたので、マイナスワンと比較した本作を語ってみたいと思います。

 

 


シン・ゴジラ

 

・思ったよりかなり会議…

 

 はい、もちろん分かりきったことではありましたが、シンゴジは思った以上に会議の描写が多いし長いです。本作のストーリーがほとんど全て会議の中で進んでいると言っても過言ではないくらい多いです。

 

 正直シンゴジはここが醍醐味みたいな感じに現在でこそなってますが、改めて見ると本当予想以上に会議ばっかりです。しかも、会議の内容をしっかり注意深く聞いてみると、政治家たちの無能なこと無能なこと……序盤は特に若干イライラするくらい無能ムーブが続いていたので、思った以上に独特な映画なんだと改めて感じました。

 

 ただ、そんな会議シーンの中でも、発せられる発言からキャラクターを推し量れたり、表に出ない各国の思惑や、一般人には見せない総理の本音などなど…しっかり聞いてみるとやっぱり密度が高くてどっしりした会話の会議シーンが多く、それが今回の舞台である「日本政府」とマッチしていたので、独特でありながら見事なバランスで成り立っていると感じました。

 

・思ったよりCGが…

 

 今回、マイナスワンを見た後で改めて感じたのが、本作のCGのクオリティの低さです。特に車や船やらが押し除けられていくシーンでは、本当に思った以上にCGがのっぺりしています。

 対してマイナスワンでは、さすが色々CG作品撮ってきた山崎監督と思えるほど高クオリティで、船やら飛行機やらがギュンギュン動いても、「なんか荒いなぁ…」みたいなのは全然感じませんでした。

 

 また、今回シンゴジ見て感じたのは、本作のゴジラは思ったより街を破壊してません。確かに、バカでか熱戦で首都を火の海にしたり、ラストバトルで多少暴れたりはしましたが、基本本作ゴジラは圧倒的すぎて、都市を踏み潰すことはあっても、大暴れして街を能動的に壊している感じはありませんでした。対してマイナスワンでは、明確に人類に殺意を持って電車や建物をガッシャガシャするシーンがあるので、破壊衝動はこちらの方が満たされるな…と感じました。なんというか、圧倒的”静”のシン・ゴジラと、圧倒的”暴”のマイナスワン……てなイメージでしたね。

 

・”特撮的”カメラワーク

 

 実は先日、山崎監督と庵野監督の対談を見まして…

 

youtu.be

 

 んでその中で、庵野監督は”特撮”で、山崎監督は”VFX”だ」みたいな話がありました。

 

 最初見た時は「ほぉーん」くらいに思ってましたが、その対談を踏まえてシン・ゴジラをみると、本作では街中にいるゴジラを建物の間の人間視点で捉えたり、逆に顔面にドアップしてみたりと、フルCG作品ながら”特撮作品感”を感じるカメラワークが数多くあり、新しい映画なのにクラシックな雰囲気もある…みたいな微妙で独特な雰囲気を出すことに成功していました。

 

 対してマイナスワンでは、明確に何かの視点というよりも、「こういう絵で見せたい」というのを中心にカメラワークを組み立てていて、確かにハリウッド映画的でインパクトのある絵作りをしていたと感じました。

 

 

 

 

 …というわけで、今作は、「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」と比較した「シン・ゴジラ」について語ってみました。

 

 両作を比較してみると、やっぱり「マイナスワン」と「シンゴジ」が対照的な作り方になっていることや、シンゴジがどんだけ独特な作風になっているかを再認識できました。

 

 正直、こうやって書き出すとなんでこんな独特なことやっててシンゴジが大ヒットだったのか疑問になりそうですが……まぁ、震災直後というタイミングとか原点回帰的作風とか、色々あるんだろうな…

 

 

マイナスワンが好調なので、今後のゴジラ映画にもちょっと期待です。

 

 

 

 

 

 

 

「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を見てきた話(ネタバレなしショートver)

 

 どうもエイトシーです。

 

 

 見てきましたよぉ!!!!

 

 

 山崎貴氏が監督と務めると発表以来、公開前から「ALLWAYS三丁目のゴジラやら「ゴジ泣き」やらゴジラYOUR STORY」やら割と散々なことを言われておった「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」…公開日に観に行くことができました。果たして面白かったのか?「シン・ゴジラ」やら「ギャレゴジ」と比較してどうだったのか?というところを語ってみたいと思います。

 

・まず率直な感想

 

 

 まず私個人の率直な感想としては……

 

 

 かなり面白かったです!!

 

 正直「ユアストーリー」の悪評がかなり気になってましたし、何より前作があの超大作「シン・ゴジラ」でしたから、それを超える映画になっているとは思えず、かなり不安入り混じって鑑賞しに行きましたが、全く杞憂でしたね。

 

 

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 何なら、シン・ゴジラ」と比較しても全く遜色ないくらいの名作映画として出来上がっていたと感じました。

 

 …しかし、全くツッコミ所が無かったかというと…その辺も少し語りたいと思います。

 

 

 

 

・「シン・ゴジラ」と比較して

 

 まず本作、実はシン・ゴジラ」ととても比較しやすい作品になっていると思います。

 シンゴジでは、リアリティのある現代を舞台に、政府の人間をストーリーの主軸にしつつ、それでいて人間ドラマ的演出を極力排した、硬派で独特な映画であったのに対して、本作は、戦後日本を舞台に、主人公敷島の人間ドラマを主軸にした、より”一般向け”な映画であったといえます。

 特にシンゴジ以降、「特撮に恋愛描写はいらないんじゃあ!」なんて極論を目にすることも何度かあったと思いますが、本作はシンゴジで排されたドラマ要素をあえて入れていたと思われます。んで、そのドラマ描写なのですが……まぁ賛否はあるかもしれませんが、個人的にはそんなに気になりませんでした。というかそもそも、ドラマをがっつり削いだシンゴジが異質すぎたんですよね…多少のくささは感じるものの、取り立ててマイナス要素になっているわけではない、むしろ、このくらい差し障りないドラマがあった方が、ゴジラアクションに集中できたとさえ思っています。

 

 そして、本作のゴジラそのものの造形もかなり両作で対照的で、シンゴジが特異な形状で、”中に人が入っている”ような少ない動き、つまり「特撮感」をあえて出していたのに対し、本作のゴジラVFXをふんだんに使ってガシガシゴジラを動かすことで、「生き物としてのゴジラ」をうまく再現していたと思います。この辺は、どちらかというとギャレゴジとかに近かったと言えるでしょう。つまり、あらゆる面でシンゴジとは対照的で、それゆえに対照的な楽しさがあった作品だったと言えます。

 

 じゃあギャレゴジと比較して何が違うかと言われれば、一番特徴的だったのが「戦後日本」という舞台背景でしょう。

 

・「戦後日本」という舞台

 

 本作の舞台である戦後日本、別に人間パートを「ALLWAYS」風に仕上げるためだけに選ばれたのではなく、ちゃんとこの舞台設定が作品とうまくマッチしていたと言えます。

 例えばゴジラが暴れるシーンひとつとっても、レトロでノスタルジーな銀座の風景の中でゴジラが暴れている、それだけで、現代的な舞台で展開されるシンゴジやギャレゴジと異なる楽しさがあります。さらに、登場する兵器も当時物をばっちり使っているので、その辺の兵器マニアの方々にも嬉しい舞台設定になっていると言えます。”アレ”とか”アレ”とか出るんで…

 

 と、ここまではかなり素晴らしかったんですが…

 

 

・粗が目立つ脚本

 

 本作、基本的に”戦後の世界でゴジラが暴れるヒューマンドラマ”であることが最重要項目だったので、正直それ以外の部分、つまり脚本にちょっと粗が目立ちました。

 なんというか、全く期待を外れてくれないというか、予想外な一撃がストーリーで全くなく、なんなら中盤伏線を張ってる時点で逆にもうオチまでの予想がついちゃうみたいな…よく言えばシンプル、悪く言えばありきたりすぎる物語展開でした。

 

 まぁただ、逆に王道なりの熱い展開はしっかり抑えていたので、見ている最中は「まぁ、ベタでもいいか!」って思えるくらいにはなっていました。確かに、シンゴジとは逆方向だけど、そんなベタで見やすいゴジラがあってもいいじゃんか…なんて個人的には思えました。

 

 

 というわけで、今回は「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を見てきた話でした。

 

 実は、個人的に一番マイナスだった部分がまだ語れてないのですが……まぁネタバレになるので、今回は避けます。そんな感じで粗がぼちぼちある本作でしたが、それを差し引いても全然楽しめる映画だったと思います。劇場行って損した!…ってことにはならないと思いますので、ぜひ本作を見に行ってみてください。そんで、見に行ったら、ぜひネタバレあり版の記事も読んでください。

 

 

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 …私ももう一回くらい行こう…

 

 

 

 

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「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を見てきた話と”最後の10秒間”の話

 

 どうもエイトシーです

 

f:id:Eight_C:20231103205138j:image

 

 見てきましたよぉ!!!!

 

 

 山崎貴氏が監督と務めると発表以来、公開前から「ALLWAYS三丁目のゴジラやら「ゴジ泣き」やらゴジラYOUR STORY」やら割と散々なことを言われておった「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」…公開日に観に行くことができたので、熱が冷めないうちにキーボードを叩きます。果たして面白かったのか?「シン・ゴジラ」やら「ギャレゴジ」と比較してどうだったのか?わざわざタイトルにつけた”最後の10秒間”とはなんぞや?などなど、完全ネタバレ有りで語ってみたいと思います。

 

ネタバレなし版も書いたので、まだ本編見ていない方はそちらをご覧ください。

 

 

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・まず率直な感想

 

 

 まず私個人の率直な感想としては……

 

 

 かなり面白かったです!!

 

 正直「ユアストーリー」の悪評がかなり気になってましたし、何より前作があの超大作「シン・ゴジラ」でしたから、それを超える映画になっているとは思えず、かなり不安入り混じって鑑賞しに行きましたが、全く杞憂でしたね。

 

 

eight-c.hatenablog.com

 

 

 何なら、シン・ゴジラ」と比較しても全く遜色ないくらいの名作映画として出来上がっていたと感じました。

 

 …しかし、全くツッコミ所が無かったかというと…まぁその辺はガッツリ語ってみたいと思います。

 

 個人的に点数をつけるならば90点くらい!!…といきたかったのですが……

 

 

 

 

 

注:この先ネタバレ有りになりますので、是非劇場に足を運んでから読んで下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・マイナスワン版ゴジラ

 

 まず、上映から度肝を抜かれたのが、ゴジラを一つも出し惜しみしなかったことです。

 

 シンゴジやギャレゴジなんかでは、主役のゴジラの登場を出し惜しんで出し惜しんで、やっと登場ドドドーン!!……みたいにしてましたが、今作はなんと開始から十分もしないでゴジラが登場しました。いや、別に出し惜しみが普通とは言いませんけど、直近2作が出し惜しみ系だったがためにいきなり結構びっくりしました。まぁそのせいで首都上陸のインパクトがちょい弱かった気がしますが…

 

 しかし一方、熱線を吐く描写は、最初は海中に潜ることで出し惜しみまして…そこからちょっと興味を惹かれていたら、背ビレが発光&変形からの熱線放射…おまけに熱線が着弾した地点から爆発する方式だったので、とてもインパクトが出ていました。ちゃんと、ギャレゴジ、シンゴジにも引けを取らない見事なキャラクターとして造形ができていたと思います。

 

 また、一度機雷で爆破された顔面が再生するシーンも、これまでと違う無敵の怪獣感が出ていてとても良く、おまけにその傷が再生しても微かに残っているのは…素晴らしいの一言ですね。

 

 

・人間ドラマ

 

 本作が最もシンゴジと離れていた点は、「人間ドラマ」の描き方にあります。

 

 本作では、主人公の敷島を筆頭に人間サイドのキャラクターを個々人としてとても際立たせており、特攻から逃げた敷島の苦悩や、仲間の全滅を見届けた橘の絶望、強く生きる典子やぶっきらぼうでも人当たりのいい秋津などなど…人との関わりを通じて「生きる」ことを考える、敷島の物語として出来上がっていました。キャラクターでは特に、隣の太田さんと橘が印象に残っていて、二人とも臆病な敷島に殺意くらい強い憎しみを抱いていましたが、最終的には二人とも敷島が”生きる”ことを許してくれた…というのが、ベタながらとてもよかったと思います。

 

 また、彼が生活する「戦後間も無くの日本」という描写も素晴らしく、最初はボロボロのバラックから、徐々に「家」と呼べるような場所ができ、軽口を叩きながら仲間たちと酒を交わし合う描写が、戦後間も無くのレトロな情景の中で行われていました。それこそ、「三丁目の夕日」を思わせる世界観描写で(お恥ずかしながら私はまだ見てませんが)、大戦から復興がすすんだレトロな生活を思わせる世界観描写は、とてもよかったと思います。

 

 そしてそんなレトロな世界観が、ぶち壊されていくわけです……

 

ゴジラ的アクション

 

 さて、本作のゴジラですが…私の想像をはるかに超えて暴れてくれました。

 

 今作ゴジラはあえて等身を小さくして作られているようで、ちょうど銀座の時計台より一回り大きいくらいのサイズ感でした。結果、復興直後の都心の建物を”大暴れで”倒してくれたので、シンゴジよりもダイナミックな都市破壊を見ることができました。

 

 おまけに本作、かーなり容赦無く、直接的に人⚪︎にが出ます。一番最初の大戸島に出てくるゴジラはバンバン人を齧って放り投げるし、都心に上陸したゴジラはガシガシ人を踏みつけていくし、じゃんじゃん建物を破壊して人を下敷きにするし…はっきり言ってめちゃくちゃ大満足に動いてくれました。このまま海外に出しても全く問題ないくらいの完成度だと思います。

 

 …てなわけで、都市破壊も素晴らしかったですが、さらに今作では、「海戦」もめちゃくちゃ最高でした。

 

 

・”大戦直後”設定と”海戦”

 

 本作、山崎監督の代表作「永遠の0」の影響を色濃く受けていまして(こちらもお恥ずかしながら未視聴なのですが…)、大戦直後という設定をうまく利用して、当時の兵器を出しまくっていました。

 

 私は兵器の方はちょっと疎いのであまり詳しくは書けませんが、それでも重巡タカオとゴジラの戦闘シーンはとてもドッキドキしましたし、最終決戦で山盛りの船がゴジラと戦いを繰り広げるのも興奮しました。

 

 さらに大興奮だったのが、戦闘機「震電」の登場です。いや、もちろん私はミリオタではないので詳細は分かりませんでしたが、「幻の海軍の秘密兵器で、何機かが試作されたが大戦に間に合わなかったのが奇跡的に一機残ってた」みたいな、なんかガンダムのMSVみたいな説明がバッチリ入っていたので、「あぁ、監督の趣味のシーンねw」とわかったので、もう笑っちゃいました。しかも、その”秘密兵器”の名に違わない独特な形状だったので、もうど素人の私も大興奮ウッキウキで見ることができました。きっとその辺の素養のある人ならもっとウキウキできたんだろうなぁ……

 

・伏線の雑さ

 

 さて、ここまでかなり絶賛気味だったんですが、ここからちょっと気になる点を…

 

 まず、全体の伏線がはっきり言って雑でした。

 

 橘さんが震電のコックピット後ろに何か見つけた時点で「パラシュートだろうなぁ」と勘付くだろうし、太田さんの元に電報が届いた時点で「典子生きてたのかなぁ」と勘づくし、秋津さんが「やったか!?」って言ったら「やってないなぁ」と勘づくし……

 

 もう伏線を貼ってる側から先の展開が読めてしまうので、はっきり言って物語の結末は予想しやすいものだったと思います。

 

 まぁ、別にゴジラ映画で濃密な伏線をみたい訳ではないだろうし、このくらいわかりやすくてシンプルでもいいじゃないか…そう思えるほど素晴らしい映画だったと言えます。

 

・セリフ

 

 もう一個気になったのが、どうも作中のセリフが個人的に気に入りませんでした。

 

 …なんというか、長い割には別に効果的ではないというか、折角「映画」という映像で魅せられる媒体なんだからもっと効果的な方法あったのにセリフにしちゃったところがあったというか…

 

 具体的には、大戸島の原住民の伝承に語られる「呉爾羅」の存在が、原住民から直接ではなく敷島の噂話として伝えられたり、敷島の「俺の戦争が…終わってないんです」のセリフがどうにも安っぽかったり、最後の作戦名がどうも「ヤシオリ作戦」のパクリっぽく聞こえたり、どうも観客には先の読める展開をわざわざセリフで説明したり…

 

 粗探しもいいとこな気がしますが、それでも、特に前作が「重厚に効率よくセリフをぶん投げる」スタイルのシンゴジだっただけに個人的にはどうしても気になりました。

 

 まぁ、それでもこんなのは些細な問題です。こんなの、本作の魅力を考えれば無いにも等しい問題でした。

 

 …ただ一点、どうしても私が納得いかなかった点があります。それが、”最後の10秒間”です。

 

・”最後の10秒間”

 

 さてさて、こんだけ引っ張った”最後の10秒間”ですが、一体どんな映像だったのかと言うと…

 

 

  1. 実は生きていた典子の首筋に、黒い不気味な物体が侵食していた。
  2. ゴジラの破片が鼓動を始め、実はまだ生きていることが示唆された。

 

 …はい、直前まで私は、「まぁ、敷島も助かって、典子さんも生きててハッピーエンド、いささかシンプルだが、そんなシンプルなゴジラもなかなかいいじゃないかぁ…」ぐらいのつもりでいました。それが一転、最後の10秒間のこの映像で、まだハッピーエンドになりきれていない可能性が示されました。いや、ゴジラが生きてるかも…くらいの事ならまだわかる…でも、典子さんが何かに侵食されてるのは、今後明らかに典子さんにとんでもねぇことが起こる伏線です。

 

 …いや、本作はそういう伏線とかない、見やすーいゴジラだったんじゃないんかい!?……この、邦画の悪いところ寄せ集めみたいなラストのぶん投げ伏線のせいで正直かなりがっかりしました。……思うに、製作陣の「『ゴジラ-2.0(マイナスツー)』も出したいな☆」…みたいな露骨で安直な考えで差し込まれたシーンなんでしょう……だったらもっと本編の伏線にも力入れんかい!!!

本編の九割でどシンプルドラマしといて何ラストだけ一丁前に不穏に終わらせとるんじゃい!!!……と、エンドロールでは怪訝な顔をしておりました。

 

 本当にね、昨今映画を作るのが経済的に難しいのは重々承知しておりますが、こっっっこまで露骨なことして折角の名作にケチつけるのはどうなんだい!?

 

 

 

 

 

 というわけで、今回は「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」を見てきた話でした。

 

 個人的な点数ですが、本編の九割九部は90点、最高の映画です。でも、ラストの10秒のせいで総合-15点くらいになってるのが本当に残念です。出来がなかなかよくて、個人的にも大好きな映画ゆえにとっても残念です。

 

 とにかく、それを差し引いても最高の映画なので、ぜひみなさん劇場で見てきてください。

 

 

 

 …もう一回行こう

 

 

 

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原点にして頂点の実写巨大ロボット 「トランスフォーマー」を観た話

 

 どうもエイトシーです。

 

 もはや言うまでもありませんが、私は巨大ロボットが大好きです。1年ほど前にガンダムシリーズにハマり、ファイブスター物語を読み始め、エヴァンゲリオンを見始めetc……

 

 

 そんでもって私は洋画も大好きです。なんだか難解なものからただ爆発を楽しむものまで結構幅広ーく観ている自信があります。

 

 てなわけで、そんな私の大好きなものをこっっってりと全部入りにした映画の話をしましょう。

 

 今回は、トランスフォーマーの話です。

 

 


トランスフォーマー(吹替版)

 

・概要

 

 2007年のハリウッド映画「トランスフォーマー」は、日本のタカラトミーから発売された玩具から発展したシリーズを実写映画化した作品で、監督はマイケルベイ監督。

 

 自動車に変形できるロボット生命体の戦いを描いたSFアクションで、2023年現在に至るまで続編が作られ続けている超ご長寿シリーズです。

 

 ……いや、分かってますよ…私がこんなことわざわざ言わんでも知ってますよね。それだけ有名な映画ですから……なんなら今は最新作が公開中ですしね…

 

 

・確かな”存在感”

 

 さて、まず本作を語る上で絶対に外せないのが、精巧なCGで描かれたトランスフォーマーたちそのものです。

 

 現在に至るまで実写巨大ロボット映画のマスターピースであり続ける本作ですが、その一番の理由は、本作で描かれているトランスフォーマー達の圧倒的な”存在感”にあります。

 

 ……実は本作のトランスフォーマーたちの変形は”ちゃんとした”変形ではなく、変形おもちゃなどでは無理やりギミックを組み込むことで変形を可能にしていますが、映画で映される変形は実際には物理的に不可能であると言われています……それでも、それをしっかりと「変形した」と感じさせるのは理由があります。

 

 この映画のトランスフォーマー達は、自動車形態では実在の車種を数多く利用し、変形後のロボット形態でも変形前の車のディティールを少し残すことで、大胆な変形を経てもちゃんと「変形した」という印象を与えることに成功しています。

 

 それらのリアルなディティールの残ったトランスフォーマー達を、10年以上前に制作されたとは思えないほど美麗なグラフィックのCGで描いているからこそ、本作は「巨大ロボット」なんていう、世界ではにっちもにっちな題材を描いていても傑作映画たり得たのでしょう。あんな変形見せられたらおもちゃが欲しくてたまらない…

 

 

・ストーリーの密度

 

 「トランスフォーマーシリーズ」といえば、基本的にクローズアップされるのはCGの部分のみで、ストーリーに関してはあんまり語られることはありません。むしろ、爆発とCGで誤魔化してストーリーはそんなに…みたいな印象を抱いていました。

 

 しかし、少なくとも第一作目である本作ではそんなことはないと言っておきます。

 

 本作では最初にアメリカの軍隊が、圧倒的な戦力を持つ”未確認物体”達と遭遇する「サスペンス」な雰囲気で始まり、そこから冴えない学生サムの物語が並行する形で進み、後半ではそこからさらに秘密組織である「セクターセブン」が政府と彼らの間を取り持つ形で介入することで、見事に「エイリアン」、「軍隊」、「サム」の物語を調和させることに成功しています。確かにシンプルにまとまってはいますが、これだけ複数の勢力を登場させて、それでいてちゃんとそれぞれのキャラクターに個性を持たせる密度感は、やっぱり満足度は高いと思うんです。まぁこれ以降のシリーズ作品はちょっと私も思うところあるのですが……

 

 

・”バンブルビー”の存在

 

 そして、本作は後に通じる偉大な発明をしています。ズバリ、「バンブルビー」という最高に魅力的なキャラクターです。

 

 「スターウォーズ」の「R2D2」然り、「怪盗グルー」の「ミニオン」然り…強力なキャラクターというのはそれだけで世界中を巻き込む大きな波になることができます。

 

 そこで今作に登場する「バンブルビー」……黄色く目立つボディーに丸くて愛嬌のある顔、そして実際に声で喋るのではなく、ラジオをつぎはぎしながら意思疎通をとるユニークさ…さらにちょっとイタズラ好きで愛嬌もある……マジで発明級の最高のキャラクターでした。実際彼を主役としたスピンオフが作られたりもしてましたしね…

 

 

 というわけで、今回は映画「トランスフォーマー」のお話でした。

 

 …いや、もちろん本作は有名な映画なので、もうとっくに見た、今更取り上げても…と思う人もいるかもしれません。

 

 しかし、改めて見返してみると、本作はどの部分においてもすごく丁寧に作り込まれていて、ただ爆発とCGだけで誤魔化した映画ではないことがわかると思います。やっぱり、世界で大人気になるIPの誕生はただではできないのでしょう……そんなことを感じさせてくれる一本でした。

 

 

 …「ビースト覚醒」見たいなぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

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”ゴーディ”は結局何だったの? 映画「NOPE」のテーマを解説する話

 


NOPE/ノープ [Blu-ray]

 

 どうもエイトシーです。

 

 先日「NOPE」という映画についてお話ししました。めちゃいい映画なのですが映画そのものをお勧めする話はこちらを読んでもらうとして……

 

 

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 さて本作、基本的にはスカッと爽快なホラー寄り作品として出来上がっており、ストーリーもぼちぼちわかりやすいのですが、物語本編に関わらない、ちょっとノイズっぽくなっちゃってる部分があります。それが、チンパンジー「ゴーディ」に関わる事件の部分です。

 

 

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 結構序盤からセンセーショナルに描かれる割には本筋のUFO騒動とは全然関係がなく、映画を見ながら肩透かしを食らったのはきっと私だけじゃないはずです。

 

 しかし、人類の叡智インターネットはちゃんとその答えを知っていました。そして、この「ゴーディ事件」は、実はこの映画の根底に隠された”テーマ”と深い関係があったのです。

 

 というわけで今回は、映画「NOPE」のテーマを解説するお話しです。

 

 

 

 ちなみに、全力ネタバレ有りの記事になるので、まだ観てない人は、まず一旦アマプラで本作を視聴してからもう一回戻ってきてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・まず結論から……

 

 すでに散々もったいぶったので結論から先に書きましょう。

 

 

 ズバリ、映画「NOPE」のテーマとは、「差別」と「搾取構造」です。

 

 

 この映画、結構説教臭さを抜いているので↑みたいなことを言われてもいまいちピンとこないかもしれません。なので、具体例を上げながら見ていきましょう。

 

 

 まずそもそも、主人公のエメラルドとOJは、映画撮影用の馬を調教し、貸し出すことで牧場の生計を立てていました。つまり、彼ら二人は、本来野生で生活するべき動物を「搾取」して利益を得ているということができます。

 

 そして二人は、自分たちヘイウッド家のご先祖様、世界最初の映画である「動く馬」という映像でジョッキーをした最初の映画スターの話をします。そして彼は、「黒人」というアイデンテティ故に、「搾取」されたまま、後世に名を残さぬままとなってしまいました。

 

 ……などなど、本作では結構この「差別」と「搾取」の構造が結構何度も何度も出てきます。そして、実は件の「ゴーディ事件」についても、この構造を当てはめることで完璧に説明がつきます。

 

 

・「ゴーディ事件」の真相と無傷の生存者

 

 さてさて、本題の「ゴーディ事件」の話をしましょう。

 

 もうすでにお気づきの通り、この事件の裏にも「差別」と「搾取」がわかりやすく潜んでいます。この番組は、「シットコム」という枠組みの中で、チンパンジーであるゴーディを「笑い物」、「見せ物」にすることで笑いを取る、つまり、ゴーディを「差別」、「搾取」することで番組として成立していました。それに起こった結果としてなのか、ゴーディは暴走、出演者のほとんどを殴り殺し、最後は射殺されるという最後でした。

 

 しかし、この番組の出演者の中で唯一無傷で生き残った人がいます。それが、小役時代の「ジュープ」でした。ゴーディは他の出演者には怒りを込めて暴力を振るっていたのに、なぜジュープにだけは悲しそうにグータッチを差し出そうとしたのか?

 

 ジュープは、作中における唯一のアジア系の出演者でした。本編で彼の扱いがどのようなものだったのかは描かれていませんが、その他出演者が白人だったことを考えると、ジュープもゴーディと同じように、見せ物として「差別」、「搾取」されていた可能性があります。なんたってアジア人を表す差別用語には「イエローモンキー」なんて言葉もありますから……

 

 つまり、ゴーディにとってジュープは唯一自分と同じ境遇の存在だった。だから彼だけはゴーディに襲われなかったのです。

 

 ……と、ここまでならなんとなく悲劇ちっく美談ちっくにも見えますが、この後の「ジュープ」の結末はとても皮肉で悲惨なものになります……そしてここにも、「差別」と「搾取」が見えてくるのです……

 

 

・「ジュープ」の最後

 

 成長したジュープはその後妻と子供に恵まれ、テーマパークのオーナーになるなど、傍目には順風満帆なその後を送っているように見えます。しかし、テーマパークはどことなく寂れ出し、ジュープの承認欲求も次第に募っていきました。そんな時、その全ての問題を解決する手段が「やって来ました」……そう、UFOの出現です。ジュープは、自分のテーマパークの近所に出現したUFOをアトラクションとして利用しようと考えたのです。

 

 ……さて、本作は最後に判明するのですが、実はあのUFOはタコ的な生命体で、食事のために近所にたまたまいた馬(エメラルドとOJの牧場の馬)を食べたりしている"生き物"でした………そう、彼にそのつもりはなかったかもしれませんが、ジュープはあのUFOを「搾取」して利用しようとしてしまったのです。結果その行為がUFO君の逆鱗に触れたのかは定かじゃありませんが、ジュープは食べられるという結末になってしまいました。なんと因果で皮肉な結末……

 

 

 

 という訳で今回は、「NOPE」のテーマと「ゴーディ事件」の真相についてのお話でした。

 

 ……いやーーーーーー!!!、面白いッ!!

 

 今回話した部分は正味映画本編を楽しむためにはほぼ必要なく、こんな小難しい「テーマ」の部分が分からなくてもしっかり面白く作ってあります。……そこがマジですげぇ……ただメッセージを押し付けるだけじゃない、それでいてメッセージを読み解くとより深い楽しみ方ができる、マジで最高の映画です。一度見た人も、ぜひもう一度みてみてください。

 

 

 いよいよ真面目に監督の別作品も見てみたいな……

 

 

 

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令和時代のUFO 「NOPE」を見た話

 

 どうもエイトシーです。

 

 突然ですが、皆さんはUFOを探したことありますか?

 

 私はあります。

 

 星が満天輝く夜空をちょっと夜更かしして見上げながら、期待とひとさじ不安の入り混じった気持ちで動く光点を探していました。

 

 というわけで、今回はそんな子供の頃に少しだけ戻れるような……いや、あの時より幾分怖い寄りかな……とにかく、いい映画を見たのでそのお話をします。

 

 今回は、「NOPE」を見た話です。

 

 


NOPE/ノープ(吹替版)

 

・概要

 

 OJと父のオースティンは、映像撮影用の馬を調教、貸し出しする農場で仕事をしていた。ある日、馬の調教中、父のオースティンは”空から降ってきたコイン”に貫かれて死んでしまう。大黒柱を失った農場の経営は少しずつ傾いていった。そんな中、OJは脱走した馬を追って空中に”ある物”を見つけてしまう。OJと妹のエメラルドは決定的瞬間の撮影を求めて機材を集め出す……「未確認飛行物体」の正体は何か?、二人は決定的瞬間を収めることができるのか?

 監督は、「ゲット・アウト」、「アス」などのホラー映画で有名なジョーダン・ピール監督。

 

・シンプルな恐怖感

 

 本作で一番特徴的な部分が、空宇宙に浮かぶ「UFO」を用いた恐怖演出にあります。古来、UFOが登場する映画では、そのUFOがホワイトハウスを大爆発させたり、あるいは中から恐ろしいエイリアンが出てきたりなどなど……かなりわかりやすく恐怖感を演出する手法が取られていました。

 

 対して本作…デカデカとビームを撃ってくるわけではない、中からエイリアンが出てくるわけでもない、なんなら直接生き物を攻撃したりする描写もなかなか出てこない、そもそもはっきりと姿を見せてくれないなどなど……上述したいわゆるUFO映画からはちょっと外れた恐怖演出をとっています。しかし、それゆえに本作は、目的もはっきりしない、正体も掴めない、なんなら見間違いだったような気もする、でも確かな違和感として作中でずっと付きまとう……そんなリアリティのある、ある種「かつてUFOを探していた少年時代の私達」に近い目線で緊張感、恐怖感を味わうことができます。形状もシンプルで本当に一瞬見間違いにも見えるからめっちゃ怖い…

 

・爽快感

 

 じゃあ本作はホラー映画なのか?……と言われると、そうとも言い切れません。

 

 本作に登場するキャラクターは、いかにもUFO来てるにも関わらず「決定的瞬間を撮影して大儲けする」という、ホラー映画どころか昔話ですら懲らしめられる側のキャラクターがほとんどを占めています。始終ノリノリでほとんど怖気付かないエメラルドや、肝心な時に限って急に頼もしくなるOJ、思った以上にいい働きをするエンジェルや、思った以上にトチ狂ってたホルストなどなど…主要な登場人物も全員かなりいい感じに”できあがってる”ので、ホラー映画よりもスカッと爽快に映画を観ることができます。特に、全員揃ってUFO……「ジージャン」に立ち向かう様子は、本当に寄せ集めヒーロー軍団の活躍を見ているようで、わかりやすく楽しむことができました。一瞬こいつら全員そこそこゲス寄りな目的で集まってるの忘れるくらい……

 

・深いテーマ性

 

 そして一番興味深かったのが、本作のテーマ性に関してです。

 

 ちょっとここの解説をすると長くなってしまうので今回は割愛しますが、本作は人種差別や格差社会、搾取などなど…結構重ためのテーマが奥底に隠れています。

 

 正直本作はこのテーマ性を重要視するあまり、ちょっと見辛くなっている部分もチラチラあります。特に、急に挟まれる「ゴーディ」関連の話は、はっきり言えば、本筋の話を楽しむためにはノイズになりかねません。それでも、ちゃんとこのメッセージ性、テーマ性を持たせたまま、説教臭くさせず、ホラー映画としてちゃんと面白い作品に作り上げているのは、ジョーダン監督の手腕なのかな?…と思います。また、一度本作を見た後に、その”テーマ性”の部分を知ると、本作をより深く楽しむことができるので、そのように複数層にわたって楽しみ方があるのも、本作の魅力だと思います。近いうちにその辺の話もしようかな……

 

 

 というわけで、今回は「NOPE」を見た話でした。

 

 

 

 ………劇場で見たかった!!!!!!!!!!

 

 

 

 本当に当時劇場で見逃してしまったことを今は激しく後悔しています。本作のUFO描写は画面がデカければデカいほど映えたのにッ!!……後悔先に立たず、いつの日かまた劇場で見れることを祈りながら過ごそうと思います。

 

 

 …ジョーダン監督の他の作品も見てみたいな……

 

 

 

 

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